コラム

過積載の罰則は? ドライバー・運送事業者・荷主の責任と行政処分について解説

過積載の罰則は? ドライバー・運送事業者・荷主の責任と行政処分について解説

過積載とは、トラックなどの貨物自動車に「最大積載量」を超えて荷物を積載し、運行する違反行為です。

運送・物流事業において、企業のコンプライアンス体制を構築する上で「過積載」のリスク管理は避けて通れません。

この記事では、企業の管理担当者や経営層が押さえておくべき「過積載」に関する罰則の全体像、危険性、根本的な予防策について、対象者別に解説します。

運送業における過積載とは

「最大積載量」と「過積載」の考え方は図の通りです。

最大積載量:トラックが安全に走行できる限界の積載重量として定められており、自動車検査証(車検証)に明記されています。

車両総重量:トラック本体の重量(車両重量)と最大積載量、そして乗車定員分の乗員の体重(1人あたり55kgで計算)を合計したものが車両総重量です。こちらも車検証に記載されています。

車両重量: 車両本体の重さで、荷物や人を載せていない状態の重さです。

過積載最大積載量を1kgでも超えれば、法律上は「過積載」となり罰則の対象となります。

過積載の罰則(罰金・処分)は? 対象者別に解説

過積載が発覚した場合、その責任は運転していたドライバー個人だけにとどまりません。「運送事業者(会社)」や、場合によっては「荷主」も厳しい罰則や行政処分の対象となります。対象者別に具体的な内容を解説します。

荷主(メーカー・商社)

過積載の原因が荷主の行為にある場合、荷主もその責任を問われます。根拠となる法律は「道路交通法」と「貨物自動車運送事業法」の2つがありそれぞれに罰則や処分が定められています。

道路交通法での過積載

道路交通法では、荷主が過積載になることを知りながら、運転者に対して積載物を売り渡したり、引き渡したりする行為を禁止しています(第58条の5第1項)。

違反した荷主が、将来も過積載の要求を繰り返すおそれがあると警察署長が判断した場合、荷主に対して「再発防止命令」が出されます(同第2項)。

この命令に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金という刑事罰が科されます。

貨物自動車運送事業法「荷主勧告制度」での過積載

運送事業者だけでなく、荷主のコンプライアンスにおいて最も重要なのが「荷主勧告制度」です。これは、過積載が荷主の関与によって引き起こされた場合に発動します。

措置には段階があり、国土交通省は荷主の関与の程度に応じて、以下の措置をとります。

措置の内容措置の発出・発動条件
協力要請書運送事業者の違反が確認された際、荷主にもその状況を知らせ、再発防止のための協力を要請するために発出されます。
警告書勧告には至らないものの、協力要請書に従わず再び過積載に関与した場合例)荷主が積載重量を曖昧なまま依頼するなど。
荷主勧告運送事業者の違反が「主として荷主の行為に起因するもの」と認められた場合。

(参考:国土交通省「荷主勧告制度について」(貨物自動車運送事業法))

過積載における制度改正による厳格化と「社名公表」のリスク

以前は、荷主勧告を行うには「協力要請書」が先に出されている必要がありました。しかし制度改正により、そのプロセスが短縮され、協力要請書を経ずに、直接「警告書」や「荷主勧告」が行われることが可能になりました。

例えば、積み込み前に貨物量を急に増やすよう依頼したり、運送事業者に対し違反行為を指示・強要したりした場合は、初回であっても荷主勧告が発動される可能性があります。

そして、荷主勧告制度における最大のリスクは「社名公表」です。 荷主勧告が発動されると、国土交通省はその荷主の会社名と事案の概要を公表します。

罰金とは異なり、社名が公表されることは企業の社会的信用を著しく毀損させ、取引停止やブランドイメージの低下に直結する、事実上の最も重いペナルティの一つと言えます。

(参考:国土交通省 「荷主勧告制度改正の概要」)

運送事業者(会社)

運送事業者は、ドライバー個人への処分とは別に、「貨物自動車運送事業法」に基づき、運行管理者および会社(法人)が行政処分の対象となります。

① 運行管理者の責任

過積載の防止は、運行管理者の主要業務です。ドライバーへの指導・監督義務違反として、運行管理者資格証の返納命令の対象となる可能性があります。

② 事業者(会社)への行政処分

過積載は、運輸局による行政処分の対象です。違反が発覚すると、監査が実施され、違反の程度や回数に応じた「違反点数」が累積されます。

・初回の違反: 違反が確認された営業所のトラックに対し、一定期間の「車両使用停止処分」が一般的です。

・違反の繰り返し・悪質な場合:累積した違反点数に基づき、処分はさらに重くなります。

  ・「事業停止処分」(営業所全体の業務を一定期間停止)

  ・最も重い処分として「事業許可の取り消し」

これらの行政処分は、会社の売上に直接影響し経営の根幹を揺るがす重大なペナルティです。

③ 会社の代表者・責任者への刑事罰

道路交通法では「両罰規定」が設けられており、ドライバーの違反行為(過積載)について、使用者(会社や管理責任者)にも責任が問われます。過積載の運行を指示・容認していた場合、会社側も刑事罰(ドライバーと同等またはそれ以上の罰金)の対象となります。

ドライバー(運転者)個人

ドライバー個人は「道路交通法」に基づき、行政処分(違反点数・反則金)および刑事罰(懲役・罰金)の対象となります。

① 行政処分(違反点数・反則金)

 過積載の割合に応じ、以下の違反点数と反則金が科されます。

過積載の割合違反点数反則金
5割未満2点30,000円
5割以上 10割未満3点40,000円
10割(100%)以上6点

※10割以上の過積載は、反則金の対象外となり、即座に刑事手続き(下記②)に移行します。なお、違反点数6点は、即時免許停止(30日間)の処分に該当します。

② 刑事罰(懲役または罰金)

特に悪質な違反(10割以上)や、反則金の納付を拒否した場合、刑事罰の対象となります。

罰則6ヶ月以下の懲役 または 10万円以下の罰金

過積載は自動で検知・計測されている?

(引用: 国土交通省 令和5年11月7日プレスリリース)

過積載の取り締まりは、「料金所のスケール(自動重量計測器)で検知される」というイメージが強いかもしれませんが、取り締まりの方法はそれだけではありません。

過積載は目視でわかる?

警察官や高速道路の管理担当者には、目視である程度の疑いを判断される可能性があります。判断するポイントは主に以下の3点です。


タイヤの沈み込み・たわみ
規定以上の重量がかかると、タイヤが通常よりも大きく変形(潰れた状態)になります。

車体とタイヤの隙間
サスペンションが通常以上に沈み込み、車体(フェンダーアーチ)とタイヤの隙間が極端に狭くなります。

荷物の状態 
積載量に対して荷物のかさ(容積)が不自然に多いです。土砂や液体、金属コイルなど、見た目で重量がある荷物を積んでいる場合も疑いの対象となります。

警察官は、これらの視覚情報から「疑いあり」と判断した場合に車両を停止させ、簡易スケール(過積載重量計)を使用してその場で計測。最近は、高速道路のETCゲートを通る時に、自動的に計量が行われて、万が一、車両が最大積載量を超えていた場合は、その場で通報するシステムも導入されています。「見た目でバレないだろう」という安易な判断は非常に危険です。

過積載の取り締まりが厳しくなっている背景

近年、過積載に対する取り締まりは強化される傾向にあります。その背景には、主に以下の3つの要因が挙げられます。

  • 1. 重大事故の発生
    • 過積載車両が原因となる横転事故、ブレーキが効かないことによる追突事故、さらには橋梁の損傷といった重大インシデントが社会問題となりました。これらを受け、道路利用者の安全を確保するため、国土交通省や警察庁が連携して取り締まりを強化しています。
  • 2. 道路インフラの老朽化対策
    • 過積載車両1台が道路(舗装や橋)に与えるダメージは、適正に積載した車両の数千台分、場合によっては1万台分以上にも匹敵すると言われています。インフラの維持・補修費用を抑え、道路を長寿命化させるため、原因となる過積載車両の排除が急務となっています。
  • 3. 自動計測技術の進化とデータの活用
    • 高速道路の料金所などに設置される「自動重量計測装置(スケール)」の性能が向上し、走行中でも高精度で重量を計測できるようになりました。ETC2.0などのデータと連携し、違反が疑われる車両や常習性の高い事業者を特定しやすくなったことも、取り締まりの効率化・強化につながっています。

過積載が引き起こす「3つの重大リスク」

罰則や行政処分は、過積載がもたらす結果の一部に過ぎません。企業が管理すべきリスクは、それ以外にも存在します。

コンプライアンス問題(罰則・処分による)

前述の通り、罰則や行政処分は企業のコンプライアンス体制そのものを問う問題です。

  • 行政処分による直接的な損失:車両停止や事業停止は、その期間の売上を減少させ、深刻な経営ダメージとなります。
  • 信用の失墜「法令遵守の意識が低い会社」というレッテルは、金融機関からの融資、新規の取引契約、さらには人材採用(特に優良なドライバーの確保)において、長期的な悪影響を及ぼします。

事故の誘発

最も恐ろしいリスクが、重大事故の誘発です。 過積載は、車両の運動性能を著しく低下させます。

  • 制動距離が伸びる:重さでブレーキが効きにくくなり、事故のリスクが激増します。
  • 操縦性の悪化:ハンドル操作が不安定になり、カーブを曲がりきれず横転する危険性があります。
  • タイヤのバースト(破裂):過度な負荷によりタイヤが破損し、制御不能に陥る可能性があります。

車両・道路へのダメージ

規定以上の重量を積載することは、車両自体にも大きな負荷をかけ続けます。

  • 車両の劣化:ブレーキパッド、サスペンション、エンジン、フレームなど、あらゆる部品の消耗・劣化が早まります。結果として、修理費用やメンテナンスコストの増大に直結します。
  • 燃費の悪化:車体が重ければ、それだけ多くの燃料を消費します。燃料費高騰の中、過積載は経営の効率化に逆行する行為です。
  • 道路インフラへの負荷:過積載車両が繰り返し通行することで、道路の舗装や橋梁の損傷を早めます。これは社会全体への悪影響となります。

なぜ過積載は起こるのか? 現場が抱える構造的な理由

荷主からの(暗黙的な)積載要求

荷主(メーカー・商社)から「運賃効率のため1回で運び切りたい」「あと1箱だけ載せてほしい」といった要求があった場合、運送事業者側が立場上、断りきれないケースがあります。

運送会社の「1回で運び切りたい」という意識

運送会社側にも、「運行効率を上げたい」「何度も往復したくない」という心理が働くことがあります。特に長時間労働の規制(2024年問題)により時間的制約が厳しくなる中で、効率を優先するあまり過積載を容認する動機が生まれやすくなります。

積載重量の「正確な把握」が困難(目検、感覚への依存)

最も根本的な原因の1つには、積載する荷物の「正確な重量」を把握できていないことです。パレットや荷物ごとの重量が不明確・不正確であると、ドライバーや配車担当者は、過去の経験則や荷物の見た目といった「感覚」で積載量を判断するしかありません。このような管理体制が、意図しない過積載を引き起こす温床にもなり得ます。

過積載の罰則を正しく理解し、予防するには

過積載のリスクを回避し、コンプライアンス体制を構築するためには、管理担当者だけではなく、社内全体でこれらの罰則とリスクを正確に理解することが不可欠です。

社内教育と管理体制の整備

罰則の具体的な内容(点数、罰金額、行政処分)を、ドライバーや配車担当者に正確に周知・教育します。同時に、運行管理規程を見直し、過積載防止の責任体制を明確化します。

荷主との連携・交渉 

荷主勧告制度(社名公表)は、荷主側にとっても重大なリスクです。過積載防止は双方の責任であることを確認し、その上で正確な重量情報の提供依頼や、適正な積載量での運行について交渉することが重要です。

仕組みで解決

教育や意識改革だけでなく、「感覚」に頼らなくても安全な運行が可能な「仕組み(=システムやデータ活用)」を構築すること。それが、コンプライアンスを整え、過積載リスクをゼロにし、企業の持続的な成長を実現する鍵となり得ます。

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