物流業界の「多重下請け構造」とは? 仕組み・弊害・解決策を解説

運賃適正化やリードタイムの緩和といった対策が進む中で、根本的な改革が求められているのが、日本の物流業界に根付く「多重下請け構造」です。
本来、効率的な輸送網を構築するための仕組みであったこの構造は、現在では実運送体制の不透明化やドライバーの待遇悪化を招く要因とも指摘されています。サプライチェーンのガバナンスを強化し、安定した輸送力を将来にわたって確保するためには、この構造的な課題を正しく理解し、次世代のモデルへと転換していく必要があります。
本記事では、多重下請け構造が生まれた背景から、現在抱えている具体的な弊害、そして解決策について解説します。
物流業界における「多重下請け構造」とは?

「多重下請け構造」とは、荷主から業務を受託した元請け事業者が、自社のリソースで対応しきれない分を下請け事業者へ、その下請けがさらに孫請け、そのさらに下請へと業務を再委託(外注)することで形成される、多層的なピラミッド型の産業構造を指します。
建設業界などでも見られる構造ですが、物流においては特にその階層が深く、複雑化しやすい傾向にあります。
「商流」と「物流」の乖離
この構造の大きな特徴は、契約とお金の流れである「商流」と、実際の荷物の動きである「物流」が必ずしも一致しない点です。
一般的に、発注者である荷主企業から見えるのは、直接契約を結んでいる「元請け事業者(3PLや大手物流会社)」までです。しかし、実際の輸送プロセスでは以下のような多層構造が発生しているケースが少なくありません。
- 元請け: 荷主と直接契約し、全体の輸送責任を負う。
- 一次:元請事業者から委託をうける運送業者。利用運送を行い再委託することもあれば、実運送会社となるケースもある。
- 二次・三次下請け:地域のネットワークを持つ事業者が担うケースが多い。一次と同じく自身で配送すれば実運送会社にもなり得る。
- 実運送会社:最終的にトラックとドライバーを手配し、実際の輸送を行う。
このように、間に複数の事業者が介在することで、荷主が意図した品質基準や管理体制が末端の実運送事業者まで正確に伝わらないリスク、いわゆる「ガバナンスの希薄化」が生じやすい構造となっています。
なぜ多層化するのか
荷物の量は季節や曜日によって激しく増減するため、運送会社がピーク時に合わせてトラックやドライバーを常時抱えることは、固定費の増大を招き経営的に困難です。そのため、自社で運びきれない分を外部へ委託する仕組みが定着しました。また、運送会社側も「帰りの空車」を避けるために、同業者間で荷物を融通し合う「求貨求車」を活用してきました。
これらは元来、効率化のための合理的な手段でしたが、結果として輸送の実態が見えにくくなる「ブラックボックス化」を招き、近年のコンプライアンス重視の流れの中で大きな課題となっています。
規制緩和から2024年問題までの経緯

現在の物流業界が抱える多重下請け構造やドライバー不足といった課題は、突発的に発生したものではなく、過去30年以上にわたる政策と市場環境の変化によって形成されたものです。ここでは、1990年の規制緩和を起点とした構造変化の歴史を振り返ります。
1990年の規制緩和
日本の物流産業における大きな転換点は、1990年(平成2年)に施行された「物流二法(貨物自動車運送事業法・貨物運送取扱事業法)」です。 それまでトラック運送事業への参入は、需給調整規制に基づく厳格な「免許制」によって管理されていました。しかし、この法改正によって参入障壁の低い「許可制」へと移行しました。
この規制緩和の目的は、自由競争を促進し、輸送サービスの向上や低運賃化を図ることでした。実際、市場原理が働いたことで、企業の物流コスト削減や、消費者への利便性向上(宅配便の普及など)に大きく寄与しましたが、一方で「過当競争」の引き金ともなりました。
中小零細企業の増加と労働環境の悪化
規制緩和の結果、トラック運送事業者の数は爆発的に増加しました。1990年には約4万社だった事業者数は、ピーク時には6万3千社近くまで急増しています。 しかし、同時期の国内貨物輸送量は横ばい、あるいは減少傾向にありました。「荷物は増えないのに、運ぶ会社だけが増えた」ことで、市場は完全な「買い手市場」となり、激しい運賃競争が勃発しました。
この環境下で利益を確保するために定着したのが、多重下請け構造です。元請け企業はコスト競争力を維持するため、自社で車両を持たずに下請けを利用し、マージンを確保するビジネスモデルへ傾斜しました。 そのしわ寄せは、サプライチェーンの末端にいる実運送会社とドライバーへ向かいました。低い運賃の中で利益を出すために「長時間労働」と「低賃金」が常態化し、長年にわたり労働環境の悪化が放置される結果となったのです。
2024年問題と改正物流2法
こうして形成された「安価だが、ドライバーの長時間労働に依存した物流網」は、働き方改革関連法の適用によって限界を迎えました。ドライバーの時間外労働に上限規制(年間960時間)が設けられたことで、従来の人海戦術的な輸送は物理的に不可能となり、物流が停滞するリスクが顕在化しました。
働き方改革関連法による人手不足を受け、政府は2024年に「改正物流二法」を成立。これは単なる労働規制ではなく、荷主企業や元請け事業者に対し、契約内容の適正化や実運送体制の可視化(実運送体制管理簿の作成など)を義務付けるものです。 30年前の規制緩和によって複雑化した産業構造に対し、今度は「荷主責任」や「適正取引」という観点から、国が再び関与を強め、持続可能な構造への再構築を促しているのが現在のフェーズと言えます。
多重下請け構造が引き起こす問題点
多重下請け構造は、かつて需給調整を目的として生まれた背景があり現在も変わっていません。しかし、現在では適正取引などの観点から是正が叫ばれています。ここでは、この構造が引き起こす具体的な弊害について解説します。
手数料による実運送会社への報酬減少
多重下請け構造は、国内輸送網の維持という大きな課題に直結している原因の1つです。 ※1 国土交通省の調査(令和7年6月)によると、運送事業者が収受した報酬から下請依頼時に以下の手数料を差し引いている実態が明らかとなりました。さらに同調査では、66.0%の運送事業者が下請先に手数料を明示していないことも併せて判明。

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適切な報酬が実運送会社に渡らない今の現状が続いてしまうと、国内輸送が維持できなくなり荷主や元請事業者にも多大な影響を出してしまいます。※2 現に2025年上半期での「道路貨物運送業」の倒産件数33件は前年同期比の19件から大幅増となっています。
※1 国土交通省 令和7年6月 「トラック運送業における多重下請構造検討会」とりまとめ
※2 帝国データバンク 倒産集計
階層のブラックボックス化
荷主企業ですら、階層全てを把握することが難しいのが現状です。例えば、荷主はあくまで元請け企業との契約関係だけであり、実運送事業者を含めた業者を把握することができず、そもそも交渉すべき相手が誰なのかを知る手段がないので、構造改革を行うことができません。
コンプライアンスやセキュリティのリスク
荷主が自社の荷物を運送する業者を把握できないのは、コンプライアンスの観点から非常に大きなリスクを抱えています。例えば、反社会的勢力や無許可業者が自社の荷物に関わるケースが発生した場合、荷主の管理責任が問われないとは限りません。また、労働時間や過積載などを容認している業者に運送される、顧客の機密情報が漏洩してしまうなどのトラブル発生も否定できません。
輸送品質の低下とトラブルのリスク
「厳密な温度管理が必要」「時間指定厳守」「丁寧な荷扱い」といった重要な要件が、FAXや電話での転送を繰り返す過程で抜け落ち、現場のドライバーに届かないケースが散見されます。 また、万が一の事故や遅延が発生した際、責任の所在が曖昧になりやすい点も課題です。各階層で「誰が責任を取るのか」の押し付け合いが発生し、荷主への報告遅延や、再発防止策の形骸化を招きます。これはガバナンスの観点からも、荷主企業にとって看過できないリスク要因と言えます。
多重下請け構造の解決策

解決のゴールは、下請け企業間の委託を減らし直接取引を進めることです。
多重下請け構造は、階層全体の課題ですが実質的な力関係を鑑みると、荷主もしくは元請事業者の主導で進めることが現実的であると考えます。
Step1 「多重下請け」の構造を把握する
まず、荷主や元請事業者が多重下請けの構造を把握することが第一歩です。その上で、委託が過多になっていないか、省略できる箇所がないかなど、改善できるポイントを見つけることが可能となります。2025年4月より元請事業者に対して義務化された実運送体制管理簿には、階層全体のプレイヤーと運送内容が記録されており、元請事業者は荷主の求めに応じて荷主に提出する義務もあります。これを利活用することで荷主は階層全てを正確に把握することが可能となります。
Step2 求荷求車マッチングシステムの導入
階層の可視化は、ITやAIなどのシステムを使うことで可能です。
従来の単純なマッチングシステムを導入するだけでは、根本解決にはなりません。従来のシステムは、「空車」と「荷物」を1対1で結びつける「点」での単発マッチングに留まることが多く、加えて利用運送前提でのマッチングも発生するので、結局は安価な下請け構造に回帰してしまうリスクがあります。
ロジGoとAuto Dispatchが可能にする新しいマッチングの世界

シマントが開発したロジGoは、受発注業務、配車管理、請求管理まで物流に関わる業務のほとんどを自動化、可視化することで、貴社の物流コスト削減を支援いたします。
また、荷主のもつ大量の荷物データと、運送会社のもつ運行データを一度に処理することができる配車ロジックであるAuto Dispatchを、ロジGoと併せて利活用することで現状のマッチングプラットフォームが持つ課題をクリアできる可能性があります。
常時共有により安定したマッチングを実現
ロジGoは配車管理機能を実装しているので、運送会社は常日頃からTMS(輸送管理システム Transportation Management System)を用いて配車を行います。そして、トラックの空き情報はロジGoを介して、Auto Dispatchで荷物データとマッチングを行います。常に共有され「最適なマッチングをし続ける仕組み」となっているので、工数をかけず安定したマッチングを長期的に担保することが可能です。
実運送会社との直接取引が可能
TMSを通してマッチングを行う性質上、基本的に実運送会社とのマッチングが中心。実運送会社とのマッチングを自動的に行う仕組みなので、適正運賃での取引が期待できます。適切な事業者に適切な賃金が支払われるので、業界全体の継続性に寄与する仕組みとなっています。
シマントはパートナーを募集しています
シマントはロジGoとAuto Dispatchとともに、持続可能な物流業界を一緒に目指すパートナーを募集しております。現状のプラットフォームの課題とシマントのご提案する新しい仕組みについてご興味ございましたらご面談の機会をいただければ幸いです。
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