コラム

物流統括管理者(CLO)の選任が義務化! 対象企業や求められる役割とは

物流統括管理者(CLO)の選任が義務化! 対象企業や求められる役割とは

社会経済の基盤となる物流現場の持続的な成長を図るために、物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)の改正が行われました。

2026年度から施行予定とされている改正法では、一定規模以上の荷主・物流事業者(特定事業者)に対して“物流統括管理者(CLO)”の選任が義務づけられます。

物流事業者は、義務化の対象や物流統括管理者の要件、対応業務などについて理解を深め、物流効率化法の規制に対応する準備を行うことが重要です。

この記事では、物流統括管理者の資格要件や義務化の内容、対応する業務内容、求められる役割について解説します。

出典:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『5分でわかる物流効率化法の改正のポイント

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物流統括管理者(CLO)とは

物流統括管理者(CLO)とは、物流全体の持続可能性を維持・向上するための業務全般を統括管理する責任者のことです。

輸送・荷役などの基本的な物流機能を管理するほか、組織内外と連携しながら物流サプライチェーン全体の効率化を実現するための多角的な施策を推進します。

物流統括管理者の要件は、以下のように定められています。

▼物流統括管理者の要件

事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者 (重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任される必要があります)
引用元:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『物流統括管理者(CLO)の選任

単なる物流現場の各部門を統括する管理者ではなく、役員をはじめとする重要な経営判断に参加する立場の人物であることが求められます。

出典:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『物流統括管理者(CLO)の選任

特定事業者への物流統括管理者の選任が義務化!

2024年4月に改正された物流効率化法によって、特定事業者に対する物流統括管理者の選任が新たに義務づけられました。

物流統括管理者の選任が義務化されるのは、物流全体への影響度が大きいとされる特定事業者のうち特定荷主および特定連鎖化事業者に該当する事業者となります

▼義務化の対象となる特定荷主・特定連鎖化事業者

特定事業者の区分取扱貨物の重量重量の算定方法(各年度)
特定荷主特定第一種荷主9万トン以上貨物自動車運送事業者または貨物利用運送事業者に運送を行わせた貨物の合計重量
特定第二種荷主自らの事業に関して次の4つを合計した重量 1.運転者から受け取る貨物 2.別の者によって運転者から受け取らせる貨物 3.運転者に引き渡す貨物 4.別の者によって運転者に引き渡させる貨物
特定連鎖化事業者(※)以下に挙げる貨物の合計重量 1.連鎖対象者が運転者から受け取る貨物 2.連鎖対象者が別の者によって運転者から受け取らせる貨物
国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『5分でわかる物流効率化法の改正のポイント』を基に作成

特定事業者を対象とした物流効率化法の施行は、2026年度が予定されています。 対象事業者が物流統括管理者の選任を行わなかった場合には、罰金が科せられるおそれがあるため、注意が必要です。

※フランチャイズチェーン事業において一定要件を満たす本部。加盟店は連鎖対象者と呼ばれます。

出典:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『5分でわかる物流効率化法の改正のポイント』『物流統括管理者(CLO)の選任

物流統括管理者が対応する業務内容

物流統括管理者は、物流の適正化に向けた計画の作成や、ドライバーの負荷低減、運送・荷役作業の効率化を図るための業務を統括管理する必要があります。

対応する業務内容は、以下の3つとなります。

➀中長期計画の作成

物流の適正化・生産性向上に向けて、経営方針や戦略などをまとめた中長期計画を作成する必要があります。

中長期計画には、ドライバー1人当たりが1回に輸送する貨物重量の増加や、荷待ち時間・荷役時間の短縮に関する措置について記載します。

▼中長期計画に記載する内容

  • 実施措置
  • 具体的な措置の内容・目標
  • 措置の実施時期
  • 参考事項 など

作成した中長期計画は、年度ごとの提出が基本とされており、計画に変更がない場合には5年に1度の提出が求められます。

出典:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『物流効率化法の規制的措置について

②事業運営方針の作成と事業管理体制の整備

物流統括管理者は、ドライバーの負荷低減やトラック輸送の過度な集中を是正するための運営方針を作成して、事業管理体制を整備することが必要です。

具体的な施策例には、以下が挙げられます。

▼施策例

  • パレットの標準化による荷役作業の効率化
  • システム活用による配送計画や配車業務の自動化
  • トラック予約システムによる荷待ち時間の削減 など

なお、配車システムについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

配車システムで輸送を効率化! 自社にあったシステムを選ぶには

出典:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『物流効率化法の規制的措置について

③ドライバーによる運送・荷役を効率化するための業務


ドライバーの運送・荷役作業を効率化するためのさまざまな業務を担います。物流統括管理者に対応が定められている業務には、以下の6つが挙げられます。

▼運送・荷役を効率化するための業務

  1. 定期報告書の作成
  2. 貨物運送の委託・受渡しに関する国の報告徴収に対する報告書の作成
  3. リードタイムや発注・発送量の適正化に向けた社内の連携体制構築
  4. 設備投資やデジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成・実施・評価
  5. 従業員の意識向上を図るための社内研修の実施
  6. 調達先・納品先の物流統括管理者や物流関係者との連携・調整

社内の各部門と連携して統合管理を行ったり、取引先や社外関係者と協力したりして、物流全体の適正化に取り組むことが必要です。

出典:国土交通省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト『物流効率化法の規制的措置について

法令遵守だけではない!物流統括管理者に求められる役割

物流統括管理者の役割は、法令を遵守することだけではありません。物流全体の持続可能性を高めるために、経営視点で事業運営を主導する役割が求められます。

サプライチェーン改革による物流最適化の推進

物流統括管理者には、社内の関連部門とのシームレスな連携に加えて、取引先や社外事業者などとの水平・垂直連携を推進して、サプライチェーンの最適化を推進することが求められます。

▼物流最適化の推進に向けた取り組み例

  • サプライチェーンの構造的な変革を目指す中長期計画の作成・実行
  • 取引先や関係者との協力を通じた物流システム・オペレーションの改善
  • 荷主や物流事業者、製造事業者などとの情報共有による輸送力の安定供給 など

環境問題と持続可能な社会づくりへの貢献

社会インフラを支える物流企業として果たすべき社会的責任を踏まえて、物流を通じた環境負荷の低減と、持続可能性の向上に貢献する役割が求められます。

物流統括管理者には、物流GX(グリーン・トランスフォーメーション)(※1)や2050年カーボンニュートラル(※2)の推進に取り組むことが必要とされています。

▼持続可能な社会の実現に向けた取り組み例

  • モーダルシフトや共同配送によるトラック輸送時のCO2排出の削減
  • アイドリング・ストップ運転による燃費効率の向上
  • EV車両への転換によるCO2排出の削減
  • 物流拠点や倉庫の施設での省エネルギー化 など

※1…物流分野における脱炭素社会の実現による産業構造の変革
※2…2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする政府目標

災害時に備えたBCPと地域支援による社会貢献

災害時に備えたBCPの強化と社会貢献に取り組むことも役割の一つです。

物流統括管理者には、災害発生時に物流機能を維持・早期復旧させるためのBCPの策定や、物流ネットワークを活用した被災地への支援などが求められます。

▼BCPや社会貢献の観点における取り組み例

  • 物流拠点における非常用設備の準備
  • 食料・飲料水などの備蓄
  • 被災時における代替輸送手段の構築
  • 物流の標準化・規格化によるフィジカルインターネットの実現 など


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